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ため池と周辺の生物多様性保全活動第3回 ~多摩川せせらぎ池での外来種駆除大作戦~

ため池と周辺の生物多様性保全活動第3回 ~多摩川せせらぎ池での外来種駆除大作戦~

日常の景色の中の生態系を見直してみよう

台風12号が通り過ぎた9月25日の午後、二ヶ領宿河原堰(にかりょうしゅくがわらせき)傍にあるせせらぎ池でNPO法人水と緑の環境ネットワークの会主催の「ため池と周辺の生物多様性保全活動第3回」が開催されましたので、その活動を取材してきました。

二ヶ領宿河原堰は、左岸が狛江市水神下、右岸が川崎市多摩区宿河原に位置し、多摩川右岸側の最下流にある利水施設で、ここから取水された多摩川の水は二ヶ領用水へと分水されます。
二ヶ領用水は、江戸時代に水田を開発するために造られ、この用水を用いて栽培された米は3代将軍家光が鷹狩りに来たときに賞味し、以来将軍家の御飯料になりました。のちに稲毛米と呼ばれ、江戸ですし飯として大人気だったそうです。二ヶ領に「ニ」は、川崎領と稲毛領の「二」つの「領」にまたがって流れたことに由来します。現在の二ヶ領用水は本来の役割を終えていますが、今なお多摩川の水が供給され、憩いと安らぎを与える「環境用水」として活躍を続けています。

そんな由緒のあるニヶ領用水の取水口のすぐ脇にあるワンドがせせらぎ池です。NPO法人水と緑の環境ネットワークの会では、この池の水質検査と併せ、外来種のホテイアオイ、セイタカアワダチソウなどの駆除を実施し、除去作業前後の水質と繁茂状況も継続調査しています。このプロジェクトはCOP10パートナーシップ事業としても認定されています。9月25日は、このプロジェクトの3回目の活動でした。植生調査、水質調査のほか、池への野鳥の飛来状況などの説明もあり、せせらぎ池周辺が豊な生態系をつくっていることを確認することができました。池周辺の外来種の駆除もする予定でしたが、ホテイアオイ、アレチウリ、セイタカアワダチソウが池の周囲にありませんでしたので、代わりに秋の虫探しとなりました。水質調査は、パックテストによって行われました。パックテストは、試料をそれぞれの試験薬と混ぜ合わせて変化する色でその数値を測りますが、参加のこどもたちは手馴れたもので、PH値やCOD(酸素量)、アンモニウム値、リン酸値など手際よく測定し、参加者に配布された水質ログブックに記入していました。ちなみにこの日の水質結果は、次のようになりました。

PH 7.0、COD 13、NH4 0.2、 PO4 0.2以下

さて、この活動でも駆除に注力しているホテイアオイはどんな植物だと思いますか。
ホテイアオイは、熱帯アメリカ原産で日本には明治時代に花が美しい水草として観賞用に持ち込まれました。世界の熱帯・亜熱帯域に帰化し、日本では本州中部以南のあちこちで野生化しています。繁殖力が強く、肥料分の多い水域では、あっという間に水面を覆い尽くし、水の流れを滞らせ、漁業にも影響を与えるなど、日本のみならず世界中で問題となっており、「青い悪魔」と呼ばれ恐れられているほどです。冬季に大量に生じる枯死植物体の腐敗や在来の水草を競争で排除するなど環境への影響も懸念されています。このため、国際自然保護連合(IUCN)種の保全委員会が作成した 世界の侵略的外来種ワースト100(100 of the World's Worst Invasive Alien Species) にも選ばれています。ただし、日本ではホテイアオイは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に於いて、特定外来生物には指定されていません。その繁殖力を生かして、水中の窒素分などをこの植物に吸収させることを目指して、水質浄化のために利用しようとの試みもあるようですが、水域に投入しただけで放置しているケースも多く見られ、少しでも外に出れば大きな問題を引き起こすような外来種を水質浄化など環境対策として用いることは環境浄化の方法として好ましくないと、多くの専門家が批判的です。家庭の水槽などで栽培されていたホテイアオイが川や池に捨てられる例も多く見られます。

ホテイアオイのように家庭から外の環境へ放出されることで環境を汚染する例は決して少なくありません。最近では、こどもたちに人気のカブトムシやクワガタも外来種がペットショップで簡単に手に入るようになり問題になっています。飼えなくなったペットをかわいそうだからと、生きたまま野に放つことが大きな問題を引き起こすということを、大人もこどもも正しく理解する必要があります。水と緑の環境ネットワークの会では、そのような説明もため池と周辺の保全活動の一環として実行されていて、間違って認識していた特定外来生物の取扱い方を改めることができ勉強になりました。

現在の地球上では、飛行機や船舶が毎日世界中を行き来し、人も物資も短時間での移動が可能になりました。21世紀の地球は、人間だけでなく動植物にとっても狭くなったといえるのかもしれません。それゆえに、故意にではなくても菌、土壌、動植物が、世界のあちこちへと移動する可能性は大変大きいといえます。通勤や散歩の途中、道端で見かける動植物にも多くの外来種が見られるはずです。どんな法律やどんな検疫システムをつくっても、もう100年前のニッチに戻すことは出来ないでしょう。だからこそ、私たちひとりひとりが、もっと動植物のことを正しく知って、正しく取り扱う必要があるのです。そのような点においても、今回のような活動に参加することは、見慣れて気づかなかった日常の景色の中の生態系を見直し、生物多様性について身近なところから考えるよいきっかけになると思いました。

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