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通信講座No.084 「安眠できずに悩んでいませんか?」

講座No.084-1 「不眠と健康と住まいの関係」

不眠と健康と住まいの関係国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターによると、不眠症は日本の一般成人の約10%が罹患している最も有病率の高い睡眠障害のひとつです。私たちを取り巻く環境は、高齢化やストレスの増加、24時間社会、シフトワークの増加、夜型生活の恒常化など、不眠症のリスクが高まる傾向にあり、それと同時に睡眠薬の処方率も増加傾向にあるそうです。2009年の日本の一般成人における1ヶ月処方率(少なくとも一ヶ月に一回処方を受けた成人の割合)は3.5%、3ヶ月処方率は4.8%に至っています。
また、2011年8月31日に発表したファイザー株式会社による全国4,000名(20代以上)を対象にした「不眠に関する意識調査」では、4割を超える人に不眠症の疑いがあることを示す結果となっています。しかも、そのうち73.7%には不眠の自覚症状がないそうです。また、不眠の疑いがある人の73.7%が仕事に関する不安やストレスを抱えていることがわかっています。さらに、64%が過去1ヶ月の睡眠の質に不満があり、38.6%は睡眠時間の不足を感じていました。睡眠の質や量だけではなく、入眠に問題を抱えている人も多く、着床から入眠までの時間が10分未満なのが31.2%に対して、10分~29分が42.3%、30分以上1時間未満が20.2%、1時間以上が6.4%という結果になっています。そして、寝付けないことがわかっていてもその半数は、具体的解決策をとっていないことも明らかになりました。

近年の睡眠研究で、慢性的な睡眠不足は日中の眠気や意欲低下、記憶力減退など精神機能の低下を引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。例えば、健康な人でも一日10時間たっぷりと眠った日に比較して、寝不足(4時間睡眠)を二日間続けると食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌は減少し、逆に食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大します。つまり、わずかの寝不足により食行動までも影響を受けるのです。実際、慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病などの生活習慣病や、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患に罹りやすいことも明らかになっています。
また、慢性不眠症の患者は、交感神経の緊張や糖質コルチコイド(血糖を上昇させる)の過剰分泌、うつ状態による活動性の低下など多くの生活習慣病リスクを抱えています。さらに、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒など不眠症状のある人は、良質な睡眠を得ている人と比較して糖尿病になるリスクが1.5~2倍になることが知られており、罹患率の高さにより生活の質を低下させることも明らかになってきています。
睡眠問題は、大人だけではありません。近年、子どもの睡眠習慣の乱れや睡眠時間の減少が問題視されています。文部科学省では、睡眠習慣が正しく身についていない子どもの場合、イライラする、攻撃性が高まる、無表情になるなど情動面に影響を与えているだけではなく、学習面の結果にも表れていることを指摘し、個々の家庭や子どもの問題と捉えず、社会全体の問題として地域が一体となる取組を推進しています。
このように睡眠問題は、心身の健康や成長に大きな影響を及ぼす需要事項であり、子どもも大人も、睡眠の質と量の見直しを迫られていると言えるでしょう。そして、このような睡眠問題は日本に限ることではなく、世界的に睡眠研究が進む中で重要課題として認識されるようになり、世界各国で国家的健康戦略の 1 つとして取り上げられるようにもなってきています。
では、そもそも睡眠の量や質はどのように決まるのでしょうか。 私たち人間は約24時間を1日とする地球のリズムの上で生活する昼行性の動物です。その習慣は生後、環境の影響を受けながら確立されます。誕生後に明暗の 区別ができる環境のもとで「昼間に起きている」ことを身に付け、生後およそ4ヶ月頃昼夜の区別ができるようになり、昼寝の回数や時間の減少とともに、「朝起きる、夜は眠る」リズムを確立するのです。
しかし、人間の体内にある生体時計は1日24時間より長めで動いています。そのため、早寝よりも遅寝、昨日よりも1時間遅くまで寝て、1時間遅くまで起きている方が楽な身体の仕組みになっているのです。この仕組みのために、私たちは生体時計を毎朝調節する必要があります。脳の視交叉上核という時計遺伝子があるところで、朝の光を認識することによって生体時間の調整、つまり脳の生体時計のリセットを行う必要があるのです。
さらに、私たちの生体時計は、遺伝的要因でも異なることが分かってきました。早起きが得意とか夜更かしが得意ということを指して使う朝型や夜型という言葉がありますが、最近の研究で、朝型と夜型では生まれつき生体時計の特性が少し異なることが明らかになりました。遺伝的に生体時計が24時間にごく近い人は朝型で、より長めの人は夜型になりやすいのです。他にも、加齢が睡眠時間に影響を与えることも分かっています。
睡眠に影響を及ぼしているのは、生体時計だけではありません。人間の体内にはさまざまなリズムがあり、睡眠と特に関わりあいの深い下記の表のようなホルモンや神経伝達物質などは、およそ1日を周期とするリズム=概日リズム(Circadhian Rhythm=サーカディアン・リズム)をもっており、その分泌が睡眠に影響を与えているのです。

不眠と健康と住まいの関係

上記の表からも分かるように、私たちの睡眠は、遺伝的要素や身体的機能などさまざまな影響をうけています。言い換えれば、睡眠は内的にも外的にも影響を受けやすく、常に良質で適量な睡眠を得ることは容易ではないといえます。良質な睡眠のためには、定期的な運動や規則正しい食生活、就寝前のカフェインや飲酒や喫煙をひかえるなど、日頃の生活習慣やライフスタイルを見直すことも大切です。しかし、それらにこだわりすぎるのもかえって新たなストレスになりかねません。そこで、睡眠衛生指導項目にもあげられているのが、寝室環境の見直しです。寝室環境を整えることで、入眠の妨げや途中覚醒の要因を軽減し、睡眠の質や量の向上が期待できます。近年、寝室環境ひいては住環境が及ぼす身体や健康への影響に対する研究もいろいろ進められています。
不眠と健康と住まいの関係例えば、株式会社高千穂では、自社で新築したお施主様のうち96名の協力を得て、「住環境は家族のコミュニケーションや健康にどのような影響を与えるか」について東北大学若島准教授との協力研究を実施しました(詳細は自然素材ストーリー「住環境が健康に与える影響を株式会社高千穂と若島准教授(東北大学)が研究!」をご覧ください)。その研究結果によれば、寝室の広さと材質が睡眠の質を変えることが分かっています。高千穂が施工した新築には、シラス壁材がよく使われていますが、研究結果によると、寝室へのシラス壁の設置の有無が睡眠の質に有意に関連があり、シラス壁がない寝室のほうが、中等度以上の睡眠障害の症状を示している人の割合が多いことが分かっています。また、床面積と睡眠の質の関連については、寝室における床面積の大小によって、睡眠障害の症状の分布に差が見られる傾向が表れています。研究報告書は、「成人の睡眠の質に関連する要因は、寝室へのシラス壁の設置および寝室の床面積の規模であった。この結果は、寝室にシラス壁が設置されている場合、および床面積を8帖以上である場合、よりよい睡眠の質が得られる可能性が高いという示唆している。」と結論づけられています。

また、近年、照明メーカーによる概日リズムを整える照明の開発も進んでいます。調色、調光により光の色温度、波長、量、強さ、タイミングなどを制御することで健全な概日リズム維持に役立つ照明です。設備としては、まだオフィスや大型施設用がメインで、一般住宅用は商品の数は限られています。一般住宅用のひとつが、AGLED (アグレッド)社のTOMORIシーリングです。形状は、円ではなくややアシンメトリーなオーバルの柔らかいフォルムで、取り付けや操作が簡単なうえに、消費電力が少なく省エネです。自動で129通りのあかりを自在に調節し、生体サイクルに合わせた24時間自動調整が可能で身体のリズムを規則正しく健康的に導きます。

不眠と健康と住まいの関係

その他にも、慶應義塾大学伊香賀俊治研究室が高知県の自治体と協力して行っている調査結果によると、室内の内装を床・壁(一部)・天井に無垢材を使用した住宅とビニールクロスやビニールシートを使用した住宅で睡眠効率を比較したところ、無垢材を使用した住宅の方が睡眠効率が向上する結果が得られえています。(参照:通信講座No.051-2「リフォームで気分転換と健康性能のアップ」

以上、いくつかご紹介した研究からも分かるように、寝室環境をリフォームなどで整えることは、睡眠問題の解決、ひいては健康維持に役立つことが考えられます。睡眠の質を改善し安眠できるよう、まずは寝室の環境を見直しましょう。

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