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通信講座No.085 「お子さんの部屋は成長の妨げになっていませんか?」

講座No.085-1 「子どもの成長と住まいの関係」

環境省は、2011年1月より日本中で10万組の子どもたちとその両親の参加による大規模な疫学調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を行っています。 このエコチル調査は、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露をはじめとするさまざまな環境因子が、妊娠・生殖・先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えているのではないか」という仮説を明らかにするために、妊娠中から出産、そしてその後13年間にわたる10万人の子どもたちを調査し、環境要因が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにするもので、世界からも注目されている大規模調査です。このような状況からも、さまざまな環境因子が子どもの成長や発達に影響を与えていることは想像に難くなく、その中には住環境も含まれます。
そこで、まずは「子ども部屋」とはどんな部屋なのか考えてみましょう。
一般的に「子ども部屋」という言葉で思い浮かべるのは、子どもが勉強したり、寝たりする部屋です。最近では自分専用のテレビやパソコンを子ども部屋に持っている子どもたちもいるようですので、大人に邪魔をされずにゲームをしたり、好きなことするための部屋とも言えるかもしれません。このような用途の「子ども部屋」に相当する言葉は欧米にはありません。「nursery」という英語は、辞書によっては「子ども部屋」と訳されていますが、これは日本の「子ども部屋」の用途とは異なります。「nursery」は乳幼児の育児室を表す言葉で、家庭や商業・公共施設などにもうけられた託児・育児・保育スペースのことです。欧米における個々に与えられた部屋はあくまでも「bedroom」と呼ばれるものです。もちろん、その部屋で子どもたちは勉強をすることもありますし、音楽を聴いたり、趣味を楽しんだりすることもありますが、それは付録的な用途に過ぎません。欧米の映画やドラマで親が子どもに向かって「部屋に行ってなさい」と言い放つシーンがありますが、それは犬に「ハウス」と命じて犬小屋やケージへ留まらせるのと同じで、自由を奪い軟禁状態におく一種の罰なのです。今の日本で、何でも揃っている「子ども部屋に行ってなさい」と言っても、決して罰にはなり得ないでしょう。
この日本独特ともいえる「子ども部屋」が日本の一般家庭に現れたのは戦後のことで、それまでは「子ども部屋」のようなスペースはありませんでした。当時、自立した「個」を育てるためには子どもにも個室が必要と考えられたようです。しかし、もともとそのような文化を持ち合わせていないため、欧米で子どもが個室を与えられる意味とは異なった形で日本の住宅に根付いてしまったようです。「bedroom」として子どもに個室を与える欧米では、子どもが「bedroom」で長時間過ごしたり、篭ったりする状態を良しとはしません。子どもが宿題をリビングなどの共有スペースで行うのは一般的ですし、テレビも共有スペースで一緒に見るのが当たり前です。
このように家族で過ごす時間が、コミュニケーション能力につながっていると考えられる調査結果が、「学生生活実態調査」にでています。この調査は、全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が2009(平成21)年秋に実施したもので、大学4年生を対象にした調査の中で就職内定を得た者の回答と4年生全体の平均回答を比較すると、目上の人との会話が得意で、家族との会話が多い学生ほど、就職内定率が高いという結果が発表になっています。
・「目上の人との会話が得意」(各75.7%、70.2%)
・「家族との会話が多い」(各71.2%、67.2%)

最近、企業が求めている人材とその能力は、「コミュニケーション能力」「論理的思考力」「行動力」の3つと言われています。経済産業省が提唱する社会人基礎力の向上も「前に踏み出す力(アクション)」「考え抜く力(シンキング)」「チームで働く力(チームワーク)」を掲げています。このような状況から、「子ども部屋」は子どもが1人で長時間過ごせる環境ではなく、家族とのコミュニケーションの時間を住まいの共有スペースでしっかりと持ちながら、健全な成長を促すスペースであるべきなのかもしれません。
では、健康な成長を促す「子ども部屋」とはどんなスペースであるべきか考えてみましょう。
「CASBEE健康チェックリスト」の健康要素6項目(涼しさ、暖かさ、静かさ、明るさ、安心、安全)(詳細は通信講座No.040-1をご参照ください)をもとに整理しましょう。

◆温熱環境(涼しさ・暖かさ)

夏の暑さは、熱中症や疲労などの健康影響が懸念されます。また、冬の寒さは、風邪やインフルエンザへの感染、ヒートショックなどの健康影響が懸念されます。冷暖房だけに頼ることない温熱環境をつくることが健康のためには大切です。

□調湿効果のある内装

調湿効果の高い壁材により湿度を適度に保つことで、夏はジメジメ感を取り除き体感温度を下げるのに、冬は体感温度を上げるのに効果的です。壁材の選び方などは、通信講座No.017-3 「本格的な壁リフォームのポイント」または、通信講座No.029-2 「湿度管理で快適な住まいづくり」をご参照ください。
また、無垢のフローリング材にも、調湿作用があり、部屋が乾燥している時は水分を吐き出し、湿気が多い時には余分な湿気を吸収し、湿度を快適な状態に保ちます。詳しくは通信講座No.045-2 「空気をきれいにするリフォーム」をご覧ください。

□窓の断熱

窓からの熱の侵入または流出を防ぐ内窓の設置は、簡単な工事で温熱環境を改善する効果が大きいのでお勧めです。結露防止にも効果があります。

子どもの成長と住まいの関係

◆静かさ

騒音や振動の感じ方は、行為の内容やタイミング、体調によっても大きく変わってきます。感じ方の違いや、生活の中での慣れなどにも配慮して、不眠やストレスの原因にならないよう対処しましょう。また、子ども部屋から発生する音が、近隣の騒音とならない配慮も必要です。

□内窓の設置

外から侵入する騒音を防ぐのに最も手軽なリフォームは内窓を設置することです。内窓の設置は、断熱対策や結露防止にも効果があります。

□床の防音対策

図2が示すように、横浜市によせられた生活騒音苦情で最も多いのが、集合住宅の上下階の物音です。特に、床に衝撃が加わって発生する音を床衝撃音といい、重量床衝撃音(LH)と軽量床衝撃音(LL)の2種類に分けられます。重量床衝撃音(LH)は、子どもが飛び跳ねたり走り回ったりする時に発生する、重くて鈍い感じの音で、床の仕上げ材よりも、コンクリート床の厚さや建物の躯体の剛性など、構造そのものの方が大きく影響します。一方、軽量床衝撃音(LL)は、スプーンなどを落とした時に発生する、軽くて硬い感じの音で、一般的な防音フローリング材は、この軽量床衝撃音対策用に販売されています。

子どもの成長と住まいの関係

◆明るさ

明るさが不足している場合、作業効率の低下や段差・障害物に関する事故の危険性が増加する問題が懸念されます。逆に明るすぎる場合は、かえって眼精疲労が強くなります。就寝前の強い明かりは、睡眠障害の原因にもなりかねません。
近年、子どもの睡眠習慣の乱れや睡眠時間の減少が問題視されています。文部科学省では、睡眠習慣が正しく身についていない子どもの場合、イライラする、攻撃性が高まる、無表情になるなど情動面に影響を与えているだけではなく、学習面の結果にも表れていることを指摘し、社会全体の問題として地域が一体となる取組を推進しています。正しい睡眠習慣を身に付けられる環境づくりが必要です。

□用途に合わせた照明設備

子どもの成長と住まいの関係 生体リズムは、外的要因を受けていない状態でも、朝は体温や血圧が低く、日中にかけて高くなり、夕方、夜にかけては徐々に下がるというようにやわらかな曲線を描いて変動しています。しかし、睡眠・覚醒のリズムは24時間より長いため、光の変化を受容して体内時計を調整し、生体機能を合わせる必要があります。この調整を行わず、リズムが狂ってしまうと心身の健康にひずみがでることになります。生体リズムの異常は、うつ病、小児自閉症、登校拒否症、神経性食欲不振症、中枢神経疾患など様々な病的状態に関ることもわかっています。
図4が示すように、JISの照度基準によれば、私たちが集中力を高めて勉強や仕事をするには、全般的な明るさの何倍もの照度が机上に求められます。しかし、就寝直前までこのように明るい状態のもとで生活していると、睡眠障害の原因になることもあるのです。最近の研究によって、100~200ルクスのあかりでも、誘眠ホルモンで細胞を守る働きもあると言われているメラトニンが抑制され、眠りにくくなることがわかりました。また、成長ホルモンは、寝入って最初の深い眠りの状態で集中的に分泌されるのですが、就寝前に明かりのせいで、眠りが浅く成長ホルモンが十分に分泌されないと、幼児期の子どもの脳や体の成長に影響が起きることが心配されます。したがって、就寝前のひと時は、明るさを抑えた暖かい光でくつろぐようにすることが大切です。
このような照明のコントロールを子どもが自分自身で行うことは容易ではありません。そこで、タイマーでコントロールできる照明設備を利用したり、メインの照明は照度が低いものにして、読書や勉強をする場合には卓上ライトを使用するとよいでしょう。

子どもの成長と住まいの関係

◆清潔さ

住まいの清潔さは、美観を保つだけではなく、有害生物・病原菌や有害物質を減らし、さまざまな感染や化学物質による害を防ぐための大切な目安です。また、臭いは、化学物質、雑菌、カビの発生、換気不足などのサインでもあります。

□換気・通気の確保

既存の窓や設備で十分な通気や換気が行えない場合は、居室用の換気扇を設置するとよいでしょう。表示講座No.023-3 「カビ&結露対策リフォーム」を参考にご覧下さい。

□湿気・臭気対策

カビは結露で湿ったところに繁殖します。調湿効果の高い壁材なら、湿気や結露対策に効果があります。シラス壁のように調湿機能と同時に消臭機能も持つ壁材もあります。講座No.009-3 「本格的消臭リフォームのポイント」をご参照ください。
また、無垢材には、天然の芳香剤となるものもあり、床に無垢のフローリング材を使えば、無垢材そのものが発する木の香りが芳香剤の代わりにもなります。さらに、それぞれの木が持つ特有の香りには、さまざまな効果があることもわかっています。例えば、木の香りのする部屋で就寝すると疲れが早く取れるそうです。ビバの精油やヒノキの精油の吸入は血圧を低下させる効果があることや、ヒノキの芳香には、リラックスするときに脳内に発せられるアルファー波の量を増やすことも明らかになっています。木材の主要な精油成分であるα-ピネンの吸入は、緊張状態を抑える効果もあります。このように木の芳香には、化学合成品の芳香剤とは異なる、さまざまな効果が期待できます。詳しくは通信講座No.045-2 「空気をきれいにするリフォーム」をご覧ください。

◆安全・安心

住宅内における転倒や転落による死亡は、住宅における死亡の約半数を占めるといわれています。また、防犯性が高く安心して暮らせる住まいは、心理的なストレスを軽減することができます。肉体的な健康も重要ですが、心理的にも健康で過ごせることは健康的な生活を送る上で大切です。

□開口部の防犯強化

一階の窓など侵入されやすい開口部には面格子を設置するとよいでしょう。掃出し窓など面格子を設置できないところには、防犯ガラスが有効です。ドアや窓の鍵に不具合や不安があれば、鍵の数を増やし、防犯性の高い器具に交換しましょう。

□地震対策

本棚やタンスなど高さのある家具を子ども部屋にあまり押し込めると、地震の際に逃げ場を失いとても危険です。ゆとりを持ってレイアウトするようにしましょう。例えば、布団やベッドの位置とタンスの位置は、図5のように地震で家具が転倒することも考えて設置することが大切です。不安定な家具を設置するよりも、備え付けのクローゼットや壁面収納などを検討してみるのもよいでしょう。

子どもの成長と住まいの関係

以上の「CASBEE」の健康要素を参考に、子ども部屋を見直し、子どもの健全な成長につながるリフォームを検討してみてはいかがでしょうか。

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