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通信講座No.028 「塀や土留めのひび割れで心配はありませんか?」

講座No.028-3 「安全な土留めや擁壁の基礎知識」

前講座で説明したように安全なブロック塀には、建築基準法によって比較的明確に仕様が定められています。また、社団法人日本建築学会や社団法人全国建築コンクリートブロック工業会などによっても建築基準以上の安全性を求めた設計規準や施工マニュアルが発行されています。
しかし、土留めや擁壁についての法規は、ブロック塀ほど簡明ではありません。建築基準法に明示されているのは、2mを超える擁壁についてで、一般的な住宅街で道路より40~50cmほど高くしてある土留めについては、明記されていません。建築基準法以外では、宅地造成等規制法により指定区域内での宅地造成による切土や盛土で生じる崖に対して、擁壁の設置を規定していますが、ここでも高さ40~50cmの土留めについては明記されていません。
そこで、本講座では宅地造成等規制法により定められている擁壁について説明します。

◆宅地造成等規制法の概要

この法令は、宅地造成に伴う崖崩れや土砂の流出の恐れがある土地の区域内において、宅地造成に関する工事等について必要な規制を行い、私たちの安全を守ることを目的とした法律です。この目的達成のため、規制法によって、都道府県知事等は関係市町村長等の意見を聴いて、宅地造成に伴い災害が生じる恐れが大きい区域を「宅地造成工事規制区域」や「造成宅地防災区域」として、指定することができます。この2つの区域に指定されることで、宅地造成等規制法に則った工事及び保全が義務付けられます。この2つに指定された区域は、各自治体により公示されていますので、誰もが確認することができます。例えば、神奈川県の場合、造成宅地防災区域に指定されているところは無く、宅地造成工事規制区域は県のホームページで図1のように確認できます。
さらに、各地方自治体には宅地造成等規制法に準じた条例があり、宅地造成等規制法よりも厳しい安全対策が規定されているところもあります。

安全な土留めや擁壁の基礎知識

□造成宅地防災区域の規制概要

宅地造成に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずる恐れが大きい一団の造成宅地(附帯する道路等を含み、宅地造成工事規制区域内の土地を除く)の区域であって、下記のいずれかに該当する土地が造成宅地防災区域として指定されます。
・安定計算によって、地震力及び盛土の自重による盛土の滑り出す力がその滑り面に対する最大摩擦抵抗力その他の抵抗力を上回ることが確かめられたところ。
・切土又は盛土をした後の地盤の滑動、擁壁の沈下、崖の崩落等の事象が生じているところ。
造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者等には、災害の防止のため擁壁等の設置等の措置を講じる責務があります。
都道府県知事等が、災害の防止のため造成宅地の所有者等に勧告や改善命令を行うことがあります。

□宅地造成工事規制区域内での規制

宅地造成等工事規制区域とは、市街地又は市街地となろうとする土地の区域で、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるところです。下記のいずれかに該当する宅地造成に関する工事を行う場合には、都道府県知事等の許可が必要となり、工事完了後は、都道府県知事等の完了検査が必要です。
・切土で、高さが2mを超える崖(30度以上の斜面)を生ずる工事。
・盛土で、高さが1mを超える崖を生ずる工事。
・切土と盛土を同時に行う時、盛土は1m以下でも切土と合わせて高さが2mを超える崖を生ずる工事。
・切土、盛土で生じる崖の高さに関係なく、宅地造成面積が500㎡を超える工事。

※尚、上記の「崖」とは、地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地で、硬岩盤(風化の激しいものは除く)以外のものをいいます。
宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者等には、災害が生じないよう、常に安全な状態を維持する責務があります。
都道府県知事等が、災害の防止のため宅地の所有者等に勧告や改善命令を行うことがあります。

□宅地造成に関する工事の基準概要

①擁壁の設置
・土地の土質によって、擁壁が必要な崖面の勾配が決まっています。例えば、関東ローム層のような土質では勾配35度以上で擁壁の設置が必要になります。
・擁壁は、鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものと定められています。
【鉄筋コンクリート造及び無筋コンクリート造】
土圧、水圧、自重によって、擁壁が転倒したり沈下したり、また擁壁の基礎が滑らないことを決められた構造計算によって確かめたものでなくてはなりません。図2は、構造図の例です。

安全な土留めや擁壁の基礎知識

【間知石錬積み造及びその他錬積み造】
擁壁の勾配、高さ及び下端部分の厚さと上端部分の厚さが、崖の土質に応じて定められた基準に適合しなければいけません。間知石など組積材は、控え長さを30cm以上としてコンクリートを用いて一体の擁壁とし、かつ、その背面に栗石、砂利又は砂利混じり砂で裏込めをしなければなりません。状況によっては、さらに適当な間隔に鉄筋コンクリート造の控え壁を設ける等必要な措置を講じることも定められています。ただし、コンクリートブロック練積み造は、材料、構造、工法共に、間知石よりも厳しい規準があります。使用できるコンクリートブロツクは、認定申請の日から起算して1年前までに施工が終了した擁壁の施工実績が施工件数で50件以上かつ擁壁前面の面積で1万平方メートル以上あり、倒壊等の重大な支障を生じたことがないもので、さらに、胴込めコンクリートによって擁壁全体が一体性を有する構造となり、その施工が容易であることと定められています。図3は、その構造図の例です。

安全な土留めや擁壁の基礎知識

② 水抜き穴の設置
裏面の排水を良くするため、壁面の面積3㎡以内ごとに少なくとも一個の内径が7.5cm以上の陶管やそれに類する耐水性の材料を用いた水抜き穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜き穴の周辺とその他必要な場所には、砂利その他の資材を用いて透水層を設ける必要があります。
③排水設備の設置
地表水等により崖崩れ又は土砂の流出が生じる恐れがあるときは、その地表水等を排除することができるように、定められた排水施設を設置する必要があります。

以上のように設計・施工された擁壁をイラストで簡潔に示したのが図4です。

安全な土留めや擁壁の基礎知識

安全で耐久性の高い擁壁には、土質を考慮した設計と構造、そして確かな施工が重要です。どんなに建物の耐久性や耐震性が高くても、敷地の地盤を安定させる土留め・擁壁の安全性が低くては意味がありません。そのためには、知識と経験のある専門家や業者に工事を依頼することが大切です。地震や大雨の後の自己点検と時には専門家による点検を行い、メンテナンスを怠らず、適切な補強や改修工事を早めに行うようにしましょう。
自治体などによっては撤去や補強などの費用の補助を受けられる場合がありますので、上手に活用するとよいでしょう。例えば、横浜市では「がけ地防災対策工事助成金制度」があり、個人が所有する高さが2mを超える崖で、崖崩れが予想され居住用建物に被害が及ぶ恐れがある場合の防災工事は、条件によって助成の対象となります。自分が住む自治体に問い合わせてみましょう。

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